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Archive for 2005年8月

今年の夏は国立公園好きには夢のようなSedonaGrand CanyonMonument ValleyArchesBryce CanyonZionという豪華な旅に出かけた。つきあいの古いブライアンと旅行の話をしていたとき、夫人がインディアンの聖地セドウナの大ファンで、行くたびに元気をもらって帰ってくるという話を聞いて、どうしても僕らも元気が欲しくなった。そんなわけで、グランドキャニオンからスタートするつもりだった今年の旅行は、急遽一日前倒しのセドウナから始まることになった。前に写真で見たDelicate Archという岩のアーチを見たくてアーチス国立公園も強引に日程に押し込んだ。

初日の朝早く出発し、昼頃アリゾナに入ったころから西部劇でおなじみのサボテンがボツボツ出没し始めた。土は赤く、空は抜けるような青。地平線の彼方まで真っ白な雲が無数に浮かんでいる風景は、西部の風情満点である。よその州に行くとたいてい場違いな気分に陥る僕にしては、アリゾナでは勝手にアットホウムな気分を味わっている。たぶん鮮やかな自然の色のコントラストと、広々とした風景、それにカリフォルニア同様のカラッとした気候が性に合うのだろう。

例のサボテンは、 Saguaro(サワロと発音)と呼ばれるアリゾナ原産の種類だ。日本のサボテンのイメジから想像するより遙かに背が高く、10メーターを超えるものもある。高速に並ぶ山肌に群生する様子はまさに壮観だ。成長が遅く、腕が生えるまで75年かかるらしく、アリゾナではむやみにサワロを抜いたり傷つけたりすると、法律で罰せられてしまうので要注意だ。みやげに、なんて思わないように。みやげにはちょっとでかすぎるか。

目立って建物が増え始めると、そろそろアリゾナの州都フィーニクスに近い。知り合いの話では、カリフォルニアとネバダの住宅ラッシュが一巡したいま、フィーニクスの住宅市場が過熱しているそうだが、郊外に並ぶ夥しい数の新築分譲住宅を見て確かにその通りだと思った。

ここまで比較的順調に来たが、あいにく現地の帰宅ラッシュに鉢合わせになってしまった。ひどい渋滞に巻き込まれ、じたばたしても仕方がないと観念して予約が入れてあるB&Bに電話した。今頃ならまだ3時間はかかるよ、と聞いて、ちょっとげんなり。折角交通渋滞のメッカ、ロサンゼルスから脱出したのに、ここまで来て渋滞に引っかかるとは。到着予定は7時に変更になった。夏の一日は長く、まだ陽が高いことだけが救いである。フィーニックスの中心地を避けて北向きのI-17号に乗り換えても依然渋滞は続く。近年の人口急増にインフラが追いついていないのは明らかだ。やがてカープール車線が現れたので、若干状況はよくなった。

カリフォルニアで普通カープール車線と呼ばれる搭乗者2名(場所により3名)以上の車両専用車線は、アリゾナ州ではHOV(High Occupancy Vehicle=高密度車両)車線と表記される。アリゾナのHOV車線がカリフォルニアと異なる重要な点は、この車線に出入りする出入口が特定されていないということだろう。従って、どこから出入りしてもよく地元のドライバーたちはヒョイヒョイ自由に出入りしている。点線の部分以外は出入禁止のカリフォルニアの高速に慣れたドライバは、実線を横切るときちょっと後ろめたい不思議な気持ちになる。裸で街を歩くような開放感。もっとも、ロサンゼルスにはそんな奴はザラですが。

I-17号も都市部から離れるにつれ、徐々に交通量が減り(これがロサンゼルスと違うところ。ロサンゼルスはどこまで行ってもラッシュアワーは車が減らない)、もとの80マイル(130キロ)が出るようになった。やがて見晴らしのよい高原に登るが、遙か彼方に数カ所黒い雨雲から雨が降っているのが見える。さらに時折ピカッと稲妻が走ったり落雷したりしているじゃないか!やっぱり、アリゾナは広いなあ。ただし、僕らが向かっている方向でも雷がゴロゴロしているので、そんな悠長なことはいってられない。車って、落雷しても大丈夫だっけ?

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雨雲を一つ突き抜けて、セドウナに向かう州道AZ-179号に乗り換える。目の前には赤い奇岩と緑の木々と青い空。今日はおまけに虹まで出て、僕らのセドウナ入りは非常にドラマチックな演出となった。

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セドウナの街に入る前にベル・ロックというなるほど釣り鐘のような格好をした岩がある。今日は、これを横目でみながら中心地へと向かう。高原の観光地そのもののセドウナの街に着いた途端、今度はバケツをひっくり返したような通り雨の歓迎を受ける。交通は一時凍結状態になったが、よくあることなのか、地元の人々は平然としている。雨はすぐに収まり、また立派な虹が現れる。僕らは、よほど歓迎されているらしい。

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今晩の宿は街からちょっとはずれた森の中のB&Bだ。森の中にあるというのが曲者で、住所を見て場所を探すのが難しいということが今更のように気がついた。刷っていった地図を手がかりに何度も舗装されていない道を行ったり来たりするが、一向に見つからない。やがて夕闇が迫ってくるとともに、雨も降り出し、雷が始まった。ちょっと歓迎されすぎ!

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森の中を探すこと小一時間、幹線の支線からさらに細い道に枝分かれし、牧場を横切ってようやく宿に着いたころには、もう8時を回っていた。相変わらず断続的に閃光が光っているが、雨は上がった。到着した宿は、説明通り確かに森の中にあり大変静かで、よく手入れされている。出迎えてくれたインキーパーのDanさん、Sueさん夫妻は、僕らの遅い到着に嫌な顔一つせず、暖かく歓迎してくれた。B&Bを経営しようという人々は、とにかく人間が出来てないと務まらないと思った。

到着が遅かったので、施設の説明は最低限に端折ってもらい、鍵を受け取ると即座に夕食に出かけた。ホテルに向かう途中見かけたTlaquepaque(トゥラケパケ)という小粋なスペイン風のコンプレックスが気になっていたので、とりあえずそこへ向かう。たっぷり道に迷ったおかげで、街に出るのは何でもなかった。怪我の功名というところか。すんなり行けば、驚くほど近かった。

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トゥラケパケは、メキシコにある同名のアーチザンの村をモデルに開発された複合施設で、ギャラリー、骨董、ブティック、レストランの他、リゾートホテルも併設する。建築はアドビ独特の素朴な南国の風合いで統一されており、花壇が彩る迷路のような通路、その中にこっそり隠れたパティオや噴水、木々は電飾で飾られ、まさにアーチザンの村という呼び名にぴったりの趣ある雰囲気を湛えている。

そんなトゥラケパケのレストランのなか、ダントツで目を引いたのがOak Creek Brewing Co.という名の、地ビールレストラン。セドウナが誇るビールの味を試さずに、セドウナを語るべからずだ。アリゾナに入れば、アリゾナ人のようにビールを飲め。とばかりに、次々とサンプルを要求し、店自慢のビールをたっぷり堪能した。たいていの場合、僕はAmber Aleが好みだが、Oak Creekの場合は殊のほかGolden Lagerがコクがあり、腰のある泡が印象に残った。 機会があればぜひお試しあれ。

翌朝、宿のダイニングにでんと置いてある大きなテイブルに座ってSueさん手製のキッシュの朝食を食べながら、他の旅行者数カップルの話を聞いていた。他の人々は、ここで数日泊まってハイキング、マウンテン・バイキング、ホースバック・ライディングなど自然との対話を存分に楽しみゆっくりするといっている。確かに、色鮮やかなアリゾナの自然を足早に通り過ぎるのは馬鹿げたことに思えてきた。ここに来て初めて納得できることである。今回はセドウナ初心者ということで、次回はゆっくりしようとりす坊と話し合った。

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快活なインキーパー夫妻に別れを告げ、外に出ると昨日の荒々しい天候が嘘のような気持ちいい快晴。B&Bは風光明媚なRed Rock State Parkにあるので、ちょっと走っては曲がり角ごとで写真を撮り、風景を楽しむことができる。そのままずっと見ていても飽きない風景。グランドキャニオンが、その壮大な大自然を売りにするならば、セドウナの魅力は心静まる静寂の大自然といったところだろう。

昨日通過したセドウナ入り口のベルロックに戻るため昨日通ったAZ-179号を引き返した。写真だけ撮影して失礼することにしたが、後で知ったところによると、ベルロックは霊気の強いインディアンの霊所の一つで重要な観光スポットらしい。見ようによっては巨大な馬糞に見えないこともないこの岩の階段を登れば、エネルギーと心の平安を授かるということ。次回チェックしよっと。

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ベルロックを後にすると、同じ道を北に引き返して街の中心街へ向かう。高原にあるセドウナのなかでも中心街はさらに高台にあり、通称「アップタウン」と呼ばれている。アップタウンは、ギャラリーや工芸品、ギフト店やレストランが多く集まる、地元の実生活とは切り離れた観光スポットである。歩けばそれなりに楽しいが、アップタウンのすぐ隣の谷底を流れるOak Creekを夾んで反対側に聳える赤い岩山に比べればその魅力は霞んでしまう。

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赤い岩山と木々の緑が織りなす絶妙のコンビネイションを目の前に臨むフードコートで軽い食事をとってから、アップタウンを貫いてフラグスタッフまで続くAZ-89A 号を一路北に向かった。次の目的地はグランドキャニオンだ。

ここにつづく】

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